第二章/庭に咲く声
次の夜も、ボクは夢を見た。
白い紫陽花が、ふたつに増えていた。
庭の奥で、少女が待っていた。前よりも、少し年上になっていた。
少しだけ髪が伸びて、表情が影を帯びていた。
「思い出すと、きれいになるの」
少女はそう言って、しゃがみ込み、土をそっと掘った。
指先から、小さな金の鈴が現れた。
「おばあちゃんが持ってたやつ……?」そう思った瞬間、少女は顔をあげた。
「これは、返ってこなかった音」
「わたしが落として、そのままになったもの」
そう言って、鈴を握りしめたまま、少女は目を伏せた。
その手が震えていた。
ボクは何も言えなかった。
風が吹いて、庭の木々が、声にならない声でざわめいた。
目が覚めると、骨はまた一本、消えていた。
箱には、二本しか残っていない。
それから数日、ボクは毎晩、夢の庭へ通った。
少女は、どんどん成長していった。
ある夜は泣きながら、手紙を書いていた。
ある夜は、誰かの名を呼んで、届かない返事を待っていた。
「伝えたかったの」
「さようなら、って。ちゃんと」
彼女の声は、もう祖母の声に重なって聞こえていた。
「あと一本で、全部、つながる」
「そしたら、わたしは――あなたに。」
少女は、笑った。
でもその笑顔は、少しだけこわかった。
朝、箱を開けると、残っている骨は一本だけになっていた。

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