ベストバイを紹介します。

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みなさんこんにちは、いきなりですが今回は私のベストバイを紹介します。

何故かというと、ベストバイの紹介に憧れたからです!

ベストバイっていいですよね、その人の思想やこだわり、趣味、人生観などいろいろなものが見えてきますよね。

まあシンプルに知らなかったいいアイテムに出会いたい、憧れの人や好きな人と同じもの使いたい!

この人のオススメなら使ってみたい!などもあると思います。

目次

今回は今年のベストバイを3個紹介しようと思います


 沙夜理がある日見かけたのはこんな記事だった。年の瀬になると大量にある、ベストバイ記事。

 沙夜理は以前からこのブログをたまに見てた。女子高生になり自分がオシャレで煌びやかな世界とは程遠いことを知ってしまい、なんとなくネットサーフィンをしていた時に「いじめられ女子でもたのしいもん!」というタイトルの記事が目に止まり、その記事に少し共感し、いじめられながらものんびりと自分を持って生きている人がいることに羨ましさを感じた。それを見てからなんとなく気が向いたら見る様になっていた。

沙夜理はいじめに悩んでいた。物が失くなるのは日常茶飯事で、少し可愛い文房具や小物を持っていくと気付いたら失くなっている。そしてそれが後日当たり前の様にカーストの高い女子達が使用している。沙夜理は聞こえてくる会話や、時系列的におかしいと気付きながらも、言えないでいた。そんなことをしたらこのいじめのステップが進んでしまうからだ。

 毎日毎日苦しい日々だ。家でも学校でも無視される。無視はされるのに私が使っているものは目ざとく監視し、少しでも可愛かったり良いものを使っていると、勝手に盗まれたり、「貸してよ」と言われたきり返ってこない。

家では母親は妹のことを可愛がっている。妹は姉贔屓を抜きにしても可愛い。少なくとも私よりは。

一歳差である妹は今年高校生になったが、夏過ぎにはこれまた可愛い友達と出かけた写真をオシャレに撮ってSNSにあげている。

母が妹を贔屓するのは必然に思えた。もちろん悔しいし、可愛くない自分にも落胆した。

早く高校を卒業したかった。そしたら全てが変わると思っていた。今学校で少し楽しいのは好きな生物の授業くらいで、結構偉い人だったらしい厳しそうな先生が淡々と話す授業は少し面白かった。でもそれ以外はあまり面白くないし、地獄だと思っていた。大学で全てリセットして好きな生物をひたすらやり込めばいいやと思っていた。

その時私はあのブログを思い出した。久々に見に行き、何個か見ているとこの書いている人は勝手に同じくらいの年かと思っていたが、今大学生だという事が分かった。置いてかないで、という気持ちが心に積もり始めながらもさらに何個か見ていると、彼女はどうやら大学でも馴染めておらず、相手にされず、寂しい思いをしているということを知った。

「じゃあ、今後一生これが続くの…?」私は目の前で遠くの光さえ、何か大きな存在に握りつぶされた。

 沙夜理が見始めた時には、ブログの書き手は高校3年生だった。彼女の受けていたいじめは沙夜理に比べるとマシなもので、無視を受ける程度で、その無視も好意的に話しかけられることは無いが、たまに日常会話はしていた。なので軽度なものであったため、自分の世界を謳歌できたのだ。ただ沙夜理は自分を重ねてしまったことで自分と同じかそれより過酷ないじめを受けていつつも、自分の世界を持った強い女性なんだと思い込んでいた。

私はなんてちっぽけで弱くて醜いんだろう。そう思って全てへの絶望の気配を自分でも感じ始めていた時、見かけたのが、

「ベストバイを紹介します。」という彼女のブログだった。そこでは3つのアイテムが紹介されていた。

1つ目、メルトチャムチャムの髪留め。2つ目、イサン・フローレの香水。3つ目、トラべランド・ティーの紅茶。

ベストバイに挙げた理由を要約すると「かわいいから」「いい香りだから」「美味しいから」と月並みなものだったけど、心がときめくのを感じた。思い返すと私は自分だけのためにアルバイトの給料を使ったことはなかった。

アルバイトを始めた時に「長女である」というだけで私は家にお金をかなり入れていた。そこで残ったお金も、数少ない友達とギリギリ呼べる人にたまに誘われる遊び様に残していた。その遊びも私は周りとうまく噛み会えず、知らないブランドの話や、クラスメイトの有る事無い事な話で、ほとんどわからない。結果として会話にもうまく入れない。なので必死に引き攣らない様に笑顔を見せるだけで余計なことは何も言わなかった。

そんな私のときめきを加速させたのはベストバイ記事の最後の一文だった。

「この3つで私は根拠のない自信を得ています笑 変身アイテムみたいな?」

根拠のない自信。確かにこの3つは生活を劇的に変えるものじゃなさそう。それでもときめいたのはこの人の自信を借りられると思ったからかもしれない。

私は初めて一人でショッピングモールやスーパー、雑貨屋を回った。そこでは色々気づきがあった。

まず、一人でいても意外と見られないし、一人の人も結構いる。そして自分もかなり過ごしやすい。

そして、一人で気ままに色々見るのはかなり楽しい。自分ってこういうものに興味があったんだ、と知る事ができた。

そして私はいろいろな場所を巡った結果、髪留め、香水、紅茶を買った。

 沙夜理は初めていろいろな場所に自分の意思で向かい、いろいろなお店や商品に感動した。今まで狭い世界にいたことに気付かされ、自分の世界の構築というものを行う楽しさを、知らず知らずのうちに堪能していた。

 沙夜理が購入したのは品名こそ同じだが、全て記事と同じものを購入したわけではなかった。

ヘアピンは記事で紹介されていたのは小さな花が5個ほどついたメタル素材の大人びたものだったが、実際買ったのはもう少し女児っぽい、大きめのリボンのついたものだった。これは自分の好きなデザインでもあったが、いつも奪ってくる彼女達の好みとはずれていそうと思ったのもあった。香水は同じブランドのブラックカラントの香りのものを購入した。少しまったりとした雰囲気を思わせる匂いで、すごく気に入ったのだ。そして紅茶は全くわからず、店員さんのオススメであったお試しの四種セットを購入した。

そこから全てが変わった、とはいかなかった。

だが、沙夜理の心や自分から見える世界は少し変わってきていた。登校の際にヘアピンを付けると、小さな頃に見ていたプロキュアの変身を思い出せた。その強さや輝きを自分も纏えた気がして、心強かった。香水をふれば、自分に見えないベールがついて守ってもらえる様な気分になれた。そしてそれらを解きほぐし、学校や家での戦いのご褒美として紅茶は丁度いいものだった。

 私がベストバイの記事を読み、買ったものは自分にとってもベストバイになった。ヘアピンはずっと身につけており、盗られないし、やはり好みと違ったのか「貸して」とも言われなかった。そして香水は家でつけていたので盗まれようがなかった。このヘアピンが可愛いねと話しかけてくれた子がおり、友達も出来た。相変わらず母は妹を可愛がり、私がヘアピンをつけた時も「似合わない」と言っていたが、どうでも良かった。これは私の変身アイテムであって、制服の様なものだったから。

妹は私の紅茶に興味を示し、「少しちょうだい」と言ってきた。それも単純に嬉しかった。お姉ちゃんとして久々に可愛い妹に影響を及ぼせた事が。

 沙夜理にとって世界は急変した。でもこれは世界自体が変わったわけではない。彼女の纏うオーラが変化しただけで。でも彼女は少し前向きになった。そして、自分が一番好きである生物の科目の先生にいじめられている気がすると相談をした。

「そうか」そう言って先生は窓の外を見ていた。そしてそのままの姿勢で続けた。

「いじめの主役は誰だと思う」私は主犯格が誰だと聞かれていると思い、答えた。

「いや、違うそうではない」

「いじめ、という出来事の主役は誰だと思うか聞いているんだ」私は意味がわからず黙っていた。

「いじめの主役は君だよ。すまない、私は厳しいことを言うかもしれない」

そう言われ、「いじめられているのはあなたのせいだ」とか「被害妄想だ」とか言われるのかと絶望し、身構えた。相談するべきじゃなかったかもしれない。と。

「生き物は基本的には天敵が存在する。そして強者は当たり前の様に弱者を捕食する。もしもこれを物語にするなら弱者が主役だ。弱者の強さに抗う姿勢に、人は感動してしまうんだ。」

「いじめは訓練だ。これからの世界への。あなたがどう活路を見出し、どう戦うかを誰もが注目している。そしてここで強くなったり、輝くのは、狩られる側である、あなただ。あなたがこのいじめの主役なんだ。」窓の外を眺めたままで先生はゆったりと、しかし強く話してくれた。

私はおそらく50%ぐらいしか理解ができなかったが、背中を押してくれているのは感じた。

私はお辞儀をして教室を後にしようとした。

「いい香りの香水だね、頑張れ」

「はい」私は力強く返事をした。

 沙夜理はそこからいじめにあまり気を留めず、仲のいい友達と一緒に過ごした。彼女は一歩づつ変わっていった。母親は相変わらずだったが、たまに紅茶を買ってきてくれる様になった。彼女は変わらない世界を、自分の周りだけでも少し変えた。

この記事を書いた人

落ちこぼれの漬物。
鉄塔の守り神をしています。
デラックスメディアアッセンブラー。

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