【縦列型短編ミステリー小説】おかき殺人事件

おかき殺人事件サムネイル
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霊豚「ふむ……実に妙だ……」

 探偵・霊豚(れいとん)は腕を組み、部屋を見回した。
 被害者・田中は床に倒れ、口から血を流して絶命している。

 部屋には外部から侵入した形跡なし。
 死因は喉の裂傷による失血死。

 そして、テーブルの上には一袋のおかき


霊豚「なるほど……これはどう考えても殺人事件だ」

 霊豚(れいとん)は厳かに言った。
 刑事・佐々木が冷静に尋ねる。

佐々木「でも、部屋は密室だったんですよね? 被害者は一人でおかきを食べていたんですよね?」

霊豚「そう……だが、それこそが犯人の狙い……!」

佐々木「え?」

霊豚「これは、単なる事故ではない。完璧に計画された密室殺人なんだ!」

佐々木「いや、さすがにそれは……」

 霊豚(れいとん)はテーブルの上のおかきを手に取り、慎重に言葉を続けた。

霊豚「このおかきにはある秘密がある……。そう、これを噛んだ瞬間、普通の人間では耐えられないことが起きるんだ」


 鑑識がデータを確認する。

「!?……確かに、このおかきは通常のものより異常に硬いですね。市販のものとは比べ物にならないくらいの強度です」

霊豚「ほれ見ろ!」

佐々木「……でも、それで喉を裂くってどういうことですか?」

霊豚「フッ……いいかい? 人間の歯というものは、硬いものを噛んだ時に予測不能な方向に割れることがある……」

佐々木「………………?」

霊豚「つまり、被害者はこの異常に硬いおかきを噛んだことで歯が砕け、それが鋭利な凶器と化し、喉を内部から切り裂いたのだ!!!」

佐々木「いや、それってただの事故じゃ……?」

ちゃうねん!! これこそが計画殺人やねん!!


霊豚「おほん……そもそも、このおかきを被害者が買った形跡はない」

佐々木「え?」

霊豚「つまり、誰かがこの特別なおかきを仕込んでいたのだ!」

佐々木「……た、確かに。じゃあ誰が……?」

 刑事たちが顔を見合わせる。

 霊豚(れいとん)は低く笑った。

霊豚「ククク……面白いじゃないか……」

佐々木「?」

霊豚「もう分かってしまったよ。犯人が。」

佐々木「え!? もうですか? 誰ですか?」

霊豚「それはな……」

 霊豚(れいとん)は、ゆっくりと自分のポケットに手を入れた。

霊豚このボクだ。

佐々木「……え?」


佐々木「……な、なんでそんなことを?」

 刑事たちが混乱する中、霊豚(れいとん)はポケットから同じおかきを取り出した

霊豚「フフ……そう、これは俺が作った特注のおかき……」

佐々木「な……!?」

霊豚「実は俺、元食品研究員なんだよ。知ってたか?」

佐々木「いや、知りませんけど!?」

霊豚「まあ、そうだろうな……ククク……」

 霊豚(れいとん)はおかきを手に取り、不敵に笑う。

霊豚「ボクはかつて食品業界に革命を起こそうとした……。究極の『硬すぎるおかき』を開発したんだ」

佐々木「……」

霊豚「だが、その技術が危険すぎると判断され、開発は中止……俺は追放された……!」

佐々木「それが……今回の事件と何の関係が?」

霊豚「簡単なことさ……! 俺の研究を盗んだのが、被害者の田中だったんだよ!!!

佐々木「えぇ……!!」

霊豚「田中は俺の研究を横取りし、大手食品メーカーに売り込んだ……!」

佐々木「そんな理由で……!?」

霊豚「復讐には、ふさわしい方法が必要だった……! だから俺は、田中にこの特製おかきを送りつけたんだ!」

佐々木「そ、そんな……!!」

霊豚「自らの口で自らの喉を裂き、絶命する……! 最高に皮肉な最期だと思わないか?」

佐々木「お前……!」

霊豚「ククク……完璧な密室殺人だ……!」


佐々木「……あの」

霊豚「なんだね?」

 刑事・佐々木が田中のスマホを見せる。

佐々木「田中さんの検索履歴、『おかき 硬すぎる』『歯 割れる』に加えて……『返品方法』ってありますけど

霊豚「……」

佐々木「つまり、普通に『硬すぎて食えねぇ!』ってクレーム入れようとしてただけっぽいですね」

霊豚「……」

佐々木「で、おかき食べたら、たまたま歯が割れて……運悪く喉を傷つけちゃっただけじゃないですか?」

霊豚「……」

佐々木「……ていうか、これ……未必の故意じゃなくて、ただの事故じゃないですか?

霊豚「……ぶひ……」


 霊豚(れいとん)は黙り込んだ。

 しばらくの沈黙の後、彼はポケットからもう一枚の紙を取り出した。

霊豚「……待て、俺にはまだ奥の手がある……!」

佐々木「え?」

霊豚「……実はこのおかき……政府の極秘プロジェクトの産物だったんだ……!」

佐々木「もういいです」

霊豚「おかきの真実を知る者は消される運命……!!」

佐々木「帰ってください」


 その後、事件は「ただの不運な事故」として処理され、無事事件は解決となった。

名探偵 霊豚は、今日も何処かでナゾを解明する。

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